背番号18

プロ野球界において、その背番号はエース番号と呼ばれる。


マリーンズもその例外ではなく、かつては剛腕で知られた伊良部や、2005年に日本一になった時のエースであり、現ピッチングコーチの清水直行がその背番号を背負った。


そして、2012年から背番号18を引き継いだのは、藤岡貴裕。


東洋大のエースとして活躍し、ドラフトの目玉としても注目された。


マリーンズ、イーグルス、ベイスターズが1位指名をし、結果はマリーンズが見事交渉権を獲得。


ドラフト後の会見で、藤岡の目からは涙が。


『最初に1位と言ってくれた球団なので。うれし涙というか、つい流れてしまいました』


このコメントからも、溢れんばかりの人の良さがうかがえる、好青年。


当時、この藤岡の姿を見て、私も思わず涙が出てしまったことを、今でも覚えている。


それからすぐに藤岡を全力で応援することを決めた私は、迷うことなく藤岡のネームが入ったユニフォームを発注したのだった。


プロ1年目となった2012年シーズンは6勝と、今後を期待させる活躍をしたが、年数を重ねるごとに成績は下降。


起用法も当初は左のエースとしての活躍を期待され、先発を任されることが多かったが、チーム事情から中継ぎへと活躍の場を移すこととなる。


中継ぎ転向後は、ロングリリーフもできる貴重な左腕として、自身の立場を確立したかに見えたが、それも長くは続かなった。


最大の課題は、彼の持ち味である、力のあるストレートを活かすことのできる決め球がなかったこと。


スライダー、カーブ、フォークと球種は多彩であったが、どれも決め球としては物足りないもので、いつしか最大の魅力であった、右バッターの膝元に食い込んでくる、クロスファイヤーのストレートも、陰りを見せ始める。


そんな中、2017年シーズンにはついに登板試合数が10試合にまで減少。


だが、そんな藤岡にも転機が訪れる。


そう、2018年シーズンからマリーンズは井口新監督を迎え、新体制を築くこととなったのだ。


コーチ陣も一新され、ピッチングコーチにはかつて背番号18を背負った先輩である、清水直行もチームに復帰した。


当然、井口監督からも藤岡に対する期待は高く、藤岡自身も先発に対するこだわりが強かったこともあり、再び左のエースとして復活することを期待した。


私自身も、今年の石垣島キャンプで藤岡の姿を見たが、練習に打ち込む姿は人一倍気合が入っていたように感じた。


そんな中でも、練習の合間には、こまめにファンのサインに応じてくれる姿も相変わらずで、歳を重ねても好青年ぶりは変わらない。


私も、今年こそはと、マリーンズの誰よりも彼を応援することを心に決め、シーズンを迎えた。


開幕戦には勿論、藤岡のユニフォームを着て行ったし、その後も、たとえ彼が1軍にいなかったとしても、背番号18を背負って応援し続けた。


しかし、私のそんな想いは届くことなく、7月26日、ファイターズの岡外野手と藤岡投手のトレードが発表された。


正直なところ、発表を見ても実感が湧かなかったし、まさかマリーンズの未来を期待された藤岡がトレードに出されるなんて夢にも思っていなかった。


その後、トレードに関する会見を観たりもしたけれど、心のどこかでそれを信じたくはなかった。


あの愛くるしい笑顔の藤岡が、ドラフト指名会見で涙を流してくれたあの藤岡がマリーンズ以外のユニフォームを着るなんて。


チームの誰よりも、愛くるしくて、真面目で、ファンのことも大切にしてくれた、あの藤岡が……。


それから、スポーツニュース等で彼が、2軍戦で登板をしたという情報を見たりもしたが、どこか夢のようにしか思わなかった。


しかし、迎えた2018年8月16日。


札幌の地で行われた、ファイターズ対マリーンズの一戦のマウンドには、ファイターズのユニフォームに袖を通した、藤岡貴裕の姿があった。


その姿を見て、やっと彼はマリーンズにいないことを認識させられた。


途端、かなしさなのか、むなしさなのか、とめどなく涙があふれてくる。


トレードや移籍はプロ野球の世界では当たり前のことで、今回の件も一般的に見れば、どうという話ではない。


両球団の思惑が一致し、求められて移籍をしたのだから、ある意味で選手にとってはメリットの方が大きいはずだ。


頭ではそんなことは分かっていても、やはり気持ちは追いついてはくれない。


でも、あのマウンドではにかみながら、相変わらず汗をたっぷり滴り落としながら、歯を喰いしばって、一生懸命キャッチャーミットめがけて投げ込んでいる背番号56は間違いなく、私の大好きな藤岡貴裕、その男だった。


だから昨日に関しては、試合結果なんてどうでもよかった。


ただ、藤岡が元気に先発としてマウンドで投げている姿を見れただけで。


次に会う時は、彼はマリーンズの敵として全力で立ち向かってくるだろうし、私も、その背中に向かって大声で藤岡コールをすることはできないだろう。


でも、今日だけは言わせてほしい。


腹の底から、彼がマリーンズで見せてくれた、あの勇姿に向かって。


彼は間違いなく、私の中で最高のピッチャーだった。


ありがとう、背番号18。


ありがとう、藤岡貴裕。


君が見せてくれた夢は絶対に忘れない。



がんばれ藤岡!


腕がちぎれるまで、思いっきり投げ続けろ!











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